指示語って何?
「これ」「それ」「あれ」など、物の名前などを直接言わないで、指して示すためのことばです。英語のthis, thatのように、世界のいろいろなことばにも指示語はあります。みなさんの国のことばにもあるでしょう?
日本語の指示語 いろいろ
日本語の指示語は、「こ~」「そ~」「あ~」の3種類がありますが、「ど~」を加えて「こそあど」と呼ばれます。みなさんはほとんど全部勉強しましたから知っていると思います。次の表の空いている所に正しいことばを書き入れてみましょう。
どうですか? 『しんにほんごのきそ』や『みんなの日本語』になかったことばもありましたが、全部書き入れることができましたか? それでは、次に使い方を復習しながら整理してみましょう。
指示語が指すもの
①これ・それ・あれ(・どれ)…物を指す
「これは何ですか」「それは誰のですか」のように、物を指します。
②ここ・そこ・あそこ(・どこ)… 場所を指す
「ここは教室です」「食堂はあそこです」のように、場所を指します。
③こちら・そちら・あちら(・どちら)…方向や人を指す
A)「東京はあちらです」のように、方向を指します。②と似ていますが、場所が見えなくてもいいです。
B)「こちらはセンさんです」のように、人を指します。丁寧です。
④こっち・そっち・あっち(・どっち)…方向を指す
③Aのように方向を指します(例:東京はあっちです)。丁寧ではない普通 の言い方です。
⑤こいつ・そいつ・あいつ(・どいつ)… 人や物を指す
③Bのように人を指しますが、乱暴な言い方です(例:こいつがセンだ)。①のように物を指す使い方もあります。
⑥この・その・あの(・どの)…物を指す
①のように物を指しますが、必ず「この○○」のように名詞といっしょに使います。「この人」「あの方」などのように人を指してもいいです。
⑦こう・そう・ああ(・どう)…性質や状態を指す
「春という字はこう書きます」のように、性質や状態(様子)を指します。
⑧こんな・そんな・あんな(・どんな)…性質や状態を指す
⑦のように性質や状態(様子)を指しますが、必ず「こんな○○」のように名詞といっしょに使います。
確認クイズ 1
( )の中の正しいことばを選んでみよう!
あ)( それ その )は私の自転車です。
ヒント:物を指します。名詞といっしょではありません。
い)お客様、( こちら こっち )へどうぞ。
ヒント:相手が「お客様」ですから丁寧に言います。
う)荷物は( その そこ )に置いてください。
ヒント:荷物を置く場所を指します。
え)体温は( こう こんな )測るんですよ。
ヒント:様子を指します。名詞といっしょではありません。
お)紹介します。( これ こいつ こちら )は山田さんです。
ヒント:人を指します。丁寧です。
現場指示と文脈指示
現場指示と文脈指示、難しいことばが出てきましたね。でも、少しずつ説明しますから、心配しないでください。
現場指示
…現場(話す人と聞く人がいる所)にある(見える)物・人・場所・様子などを指す
みなさんが初めて日本語を勉強したときに習ったのは、現場指示の使い方です。教室で本や鉛筆を使って、指差しながら「これは本です」、「それは鉛筆です」と練習しましたね。みなさんがよく知っている使い方です。ここまでの例文は全部現場指示です。
文脈指示
…話や文章の中の物・人・場所・様子などを指す
文脈指示は、みなさん、ちょっと難しいと思うかもしれません。でも、とてもよく使うんですよ。例を挙げます。
「それ」は、Aの話の中の「つながるひろがる」を指しています。
今、「つながるひろがる」はありません(見えません)。
「あれ」は文の中の「お寿司」を指しています。
今、お寿司はありません(見えません)。
「そこ」は、文の中の「たばこ屋(があった場所)」を指しています。
今、たばこ屋はありません(見えません)。
「あのとき」は、Aの話の中の「去年Bと京都に行ったとき」を指しています。
今、AとBは京都にいません。
どうですか? 文脈指示の使い方、初めて見ましたか? どこかで見たり聞いたりしたことがあるでしょう? 簡単な会話ではあまり使いませんが、長い会話をしたり、文章を読んだり書いたりするとき、必要になります。会話や読解、作文が上手になりたい人は、ぜひ文脈指示の使い方をよく覚えてください。
確認クイズ 2
( )の指示語は何を指しているか、正しいものを選んでみよう!
あ) A「さっき背の高い男の人が来なかった?」
B「(その人)なら、たった今『来週また来ます』って言って帰ったよ。」
(その人)…( Aさん/背の高い男の人 )
い) 先週、学生時代の友人の渡辺と町で 偶然会って、居酒屋へ行って、朝までいろいろな話をした。(あの頃) のことを思い出した。
(あの頃)
う) 牛乳大さじ1とマヨネーズ大さじ2をよく混ぜてください。(それに)ワインを少し入れればソースは完成です。
(それに)
え) 駅の改札口を出たところに喫茶店があるから、(そこ)で待っていてください。
(そこ)
お) 今は日本で日本語と技術を勉強して、将来は国のために役に立つ人になりたいです。(これ)が私の夢です。
(これ)…( 日本語と技術を勉強すること/国のために役に立つ人になること )
か)「お金持ちで、優しくて、料理が上手で、頭がよくて、スポーツが得意な人と結婚したいの? (そんな)人、いないんじゃないかなあ。」
(そんな)…( お金持ちで優しくて料理が上手で頭がよくてスポーツが得意な人/結婚したい人 )
こ・そ・あ の違い(現場指示)
文脈指示はちょっと難しかったですか。じゃ、ちょっと簡単な復習をしましょう。現場指示の「これ・それ・あれ」の区別です。簡単ですよ。
「これ」(話す人の近くにある物を指す)
「それ」(聞く人の近くにある
物を指す)
※話()す人()にも聞()く人()にも近()いとき、「これ」でもいいです。
「あれ」(話()す人()と聞()く人()から遠()いところにある物()を指()す)
日()本()語()の指()示()語()には「これ・それ・あれ」の3種()類()がありますが、英()語()はthis, thatの2種()類()しかありません。中()国()語()は英()語()と同()じで、这と那の2種()類()、ベトナム語()はđây, đó, kiaの3種()類()で日()本()語()と同()じです。フランス語()はce1種類()だけだそうですが、カナダのイヌイット語()では、遠()いか近()いか、上()か下()か、動()いているか止()まっているかなど、いろいろな区()別()があって、全()部()で30種()類()もあるそうです。おもしろいですね。
こ・そ・あ の違()い(文()脈()指()示())
さて、それでは次()に文()脈()指()示()の「これ・それ・あれ」の区()別()を考()えてみましょう。
これ
例():毎朝()5時()に起()きて、犬()を連()れて公園()まで散歩()に出()かけます。始()めはゆっくり歩()きますが、帰()りは家()まで軽()くジョギングします。
→「これ」が私()の健康法()です。
「これ」は話()の中()の「毎朝()5時()に~ジョギングします」を指()しています。そして、今()話()したばかりの事()で、自()分()についての事()です。ですから、下()の絵()のように、話()す人()の近()くにある事()だと言()えます。
現()場()指()示()の「これ」の使()い方()とよく似()ていると思()いませんか? では、「それ」はどうでしょうか。
それ
例:A「毎朝5時に起きて、犬を連れて公園まで散歩に出かけます。始めはゆっくり歩きますが、帰りは家まで軽くジョギングします。」
→ B:「それ」があなたの健康法ですね。
Bの「それ」はAの話()の中()の「毎朝()5時()に~ジョギングします」を指()しています。そして、聞()く人()(A)についての事()です。ですから、下()のページの絵のように、聞く人の近くにある事だと言えます。
例()2:法律家()になるために、君()は努力()してきたんじゃないのか。今()あきらめたら、ご両親()の期待()も、君()の今()までの努力()もすべて水()の泡()になるぞ。
→「それ」で君()はいいのか。
「それ」は話()の中()の「今()~水()の泡()になるぞ」を指()しています。そして、聞()く人()についての事()で、聞()く人()はよく理()解()している事()です。ですから、下()の絵()のように、聞()く人()の近()くにある事()だと言()えます。
※話()す人()にも関()係()が深()い(≒話()す人()に近()い)とき、「これ」でもいいです。
「これ/それ で君()はいいのか。」
あれ
例():A「昨日()『やっぱりレストランのハンバーグはおいしいなぁ』って何回()も言()っていたけど、私()が作()ったのはまずいって意味()?」
→B「いや、えっと、『あれ』は・・・」
Bの「あれ」はAの話()の中()の「昨日()~言()っていた」を指()しています。今()の事()ではありませんが、話()す人()(B)も聞()く人()(A)も知()っている事()です。ですから、下()のページの絵()のように、話()す人()と聞()く人()から遠()いところにある事()だと言()えます。
どうですか? 文()脈()指()示()の「こ・そ・あ」の区()別()は、現()場()指()示()の「こ・そ・あ」とだいたい同()じですね。
【ちょっと難()しい】
・文脈()指示()の「こ~」は、次()に話()すことを指()す使()い方()があります。
例():みなさん、これだけは守()ってください。嘘()をつかないということです。
「これ」=嘘()をつかないということ
・文脈()指示()の「あ~」は、話()す人()だけの記憶()(聞()く人()が知()らないこと)を指()す使()い方()があります。
例():実()は私()は5年前()に交通()事故()にあったのだが、あれで人生()が大()きく変()わった。
「あれ」=5年前()に交通()事故()にあった(交通事故のことは話す人しか知らない。)
それでは最()後()に確()認()クイズです。
確認()クイズ 3
( )の中()の正()しいことばを選()んでみよう!
あ)昨日()いっしょにデパートで買()ったケーキ、( これ それ あれ )、早()く食()べようよ。
ヒント:話()す人()と聞()く人()がいっしょに買()いましたから、二人()とも知()っているケーキです。
い)A「おなかすいた。何()かない?」
B「冷()蔵()庫()にプリンがあるから、 ( これ それ あれ )食()べていい よ。」
ヒント:BはAにプリンのことを教()えました。それに、Aが食()べるプリンですから、Aの近()くにある事()だと言()えます。
う)私()の家()の隣()に80歳()ぐらいの老人()が一人()で住()んでいるのだが、( この その あの )老人()が毎朝()5時()ごろから大()声()で歌()を歌()うので、困()っている。
ヒント:老()人()について、聞()く人()によく説()明()して理解()させました。でも、話()す人()についての話()です。だから、話()す人()にも聞()く人()にも近()いです。
え)A「先()週()の見()学()はおもしろかったですね。」
B「ええ。ギターを( こう そう ああ )やって作()るとは初()めて知()りまし た。」
ヒント:話()す人()と聞()く人()がいっしょに見()学()しましたから、二人()とも知()っている作()り方()です。
お)A「昨日()、課()長()に連絡()しないで休()んだだろう? 課()長()、すごく怒()ってたぞ。」
B「え?( こんな そんな あんな )に怒()ってた? しまったなあ。」
ヒント:A(聞()く人())は課()長()の様()子()を知()っています。B(話()す人())は知()りません。
日()本()語()が上()手()な外()国()人()でも、ときどき「こ・そ・あ」の区()別()は間()違()えてしまいます。特()に、英()語()や中()国()語()のように指()示()語()が2種()類()のことばを使()っていた人()にとっては難()しいようです。
みなさんは、まず、指()示()語()が何()を指()しているかわかればいいです。いろいろな文()章()に指()示()語()がありますから、自()分()で、5ページの確認()クイズのように何()を指()しているか考()える練()習()をするといいですよ。わからないときは日()本()人()に聞()けばわかります。
練習()問題()の答()え
日本語()の指示語()いろいろ
1)それ 2)あそこ 3)こちら 4)どっち 5)そいつ 6)この 7)ああ 8)どんな
確認()クイズ 1
あ)それ い)こちら う)そこ え)こう お)こちら
確認クイズ 2
あ)背()の高()い男()の人() い)学()生()時()代()
う)牛()乳()とマヨネーズを混()ぜたもの
え)喫()茶()店() お)国()のために役()に立()つ人()になること
か)お金()持()ちで優()しくて料()理()が上()手()で頭()がよくてスポーツが得()意()な人()
確認クイズ 3
あ)あれ い)それ う)この/その え)ああ お)そんな
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